SHIRO'S SONGBOOK
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SPECIAL

オトナの対談 松尾潔 × 鷺巣詩郎 
(商品封入のオリジナル・テキストより抜粋)

近況など・・・オトナのプロローグ

== 2005年6月某日 於 avex 5階 会議室 ==

KC : 「詩郎さん、ブログ拝見してますよ。それにしても相変わらずのスケジュールで・・・」

Shiro : 「でも松尾さんのHP中のColumnも、Columnと謳ってますがブログですよね、あれは。結構なスケジュールじゃないですか」

KC : 「スゴイ時代になりましたよね〜ホント。何も隠し事が出来ないというか・・・いや、しかし考えてみれば『知ってほしい願望』なんですけどね、公開するほうが皆じつは (笑) 」


== 2005年4月某日 於 ヒースロー空港からロンドンへ向かう道すがら ==

KC : 「今回でSHIRO'S SONGBOOKは何枚目になりましたっけ? つまり、その・・・タイトルとか、どうされるんですか? 」

Shiro : 「数字を付けてたのは、ミニ・アルバムの2.5<SHIRO'S SONGBOOK 2.5Tribute to COOL!>までなんですが、リミックス盤<SHIRO'S SONGBOOK "remixes and more" >とかDVD<GOSPEL SONGBOOK 5.1>もこの際SONGBOOKシリーズとして数に入れて6枚として、今度のは<SHIRO'S SONGBOOK ver.7.0>=ヴァージョン・セヴン・ポイント・ゼロっていうことにしようかと思ってます」

KC : 「早いですよね〜7枚目ですか。それじゃ毎回こうして僕がロンドンに来る回数も重なるはずだ。いや、じつはね、さっき入国審査を待つ間に何気なく数えてみたんですよ、入国スタンプを。そしたら初めて来た1996年から、もう26回も来てるんです、ロンドンに。初めて詩郎さんとお会いしたのも、ここヒースロー空港でしたよね?」

Shiro : 「そうです、忘れもしない1997年の春先、僕がパリからの便、松尾さんが東京からの便で、空港で待合わせたら、僕の便が1時間遅れて松尾さんをお待たせしちゃって・・・LorenとMASHの取材をお願いした時でしたよね」


『癒し系』ならぬ、オトナの音楽『濡らし系』! ?

== 2005年某日 於 EASTCOTE Studios ロンドン ==

KC : 「今日、お録りになる曲は? 」

Shiro : 「新曲を2曲です。去年 (2004年) 11〜12月の7週間セッションが終わった年末、約半分の曲の仕上がりが見えた段階で、いったん (佐藤) 研さんに音をお聴かせして、二人でアルバムの方向性を再確認しあったんです」

KC : 「ほう、それは『アーティストの詩郎さんと、A&Rの研さん』というお二人の立場で? それとも『プロデューサーの詩郎さんと、A&Rの研さん』としてですか?」

Shiro : 「鋭い質問ですね、さすが松尾さん (笑) ポイントを見逃さない。そう、その約半分でというタイミングが、まずとても良くて、今アルバムの方向
性をより強く決定づけることが出来たことは確かです。今回は『ソングライター鷺巣詩郎と、A&Rの研さん』という立場、という表現がいちばんピッタリかもしれません」

KC : 「それは、またまた興味深いですね〜。あえてソングライターと特化したワケをお聞かせください」

Shiro : 「読んで字の如し『A&R』Directorとしての研さんの役割は完璧でした。つまり『後半はこういう曲をぜひ書いてください! 』っていう明確なリクエストを貰ったんですよ。結果、僕は後半戦にむけ、お正月はガンガン曲を書いてましたから。そう、ちょっとした道しるべなんだけど、研さんが示したディレクションに僕はかなりグッときたんです」

KC : 「詩郎さんのbmrの連載にもありましたよね『こういう曲を書いてください』という具体例のハナシが。研さんが何か具体曲でも示されたんですか?お差支えなければお教えください」

Shiro : 「『癒し系』ならぬ『濡らし系』をやりましょうっていう提案です (笑) 。もちろん10曲入りぐらいのCDも貰いましたけど、まず、それより『オトナのアーバン・ソウル』みたいなキーワードに、あっそうかって頷いちゃいましたね。CDにはBiralとかMarvinの"After The Dance"なんかも入ってたけど、それは『こんな曲を』っていうより、そういう『オトナの雰囲気』の確認ですかね。だから逆に曲を書いた後のほうが良く聴いてました。確認がてら、そのCDを」


[23時すぎ、リズム隊の"Violette Sky"レコーディング開始前のひととき]

KC(ずっと終わらないジャムに)「こりゃ当分終わりそうにないですね、あ、Lorenのアドリブ(唄)まで加わっちゃって・・・詩郎さん、やっぱ曲を書く段階で、この状態のメンバーを想像しながら書くワケですね? 当然」

Shiro : 「この時間帯に録るつもりで、こういう曲を書いたってのもある (笑) 。こんな黄金の4小節パターンなら放っときゃ無限ループ状態ですから。も、得意中の得意。それを逃さず録る為に、この曲を書いたとも言えます。(エンジニアのPhilip BAGENALに) このジャムのまま録っちゃおか? 」

KC : 「同じミュージシャンとずっと演ってる強みですね。Shiro's Familyとして、これまでずっと詩郎さんのアルバムはもちろんのことMISIAや平井堅の作品なんかでも一緒ですものね。そうそう、さっき話題にでたMarvin GAYEのアルバム "I Want You" も・・・」

Shiro : 「待ってました! スタジオで夜な夜な繰り広げられたジャム・セッションをもとに上モノを足してったっていう有名な話ですね。ありゃホントだと思いますよ。リズム録った後じゃないと浮かばないモノって結構あるし、しかも深夜って本当にマッタリとしたテイクが録れるから、そんなグルーヴに触発されて『はじめて書けるストリングスやブラスのフレーズ』ってのも絶対にあるんですよ。Marvinのあのアルバムはまさしくそれですね」

KC : 「はいはい、この音から研さんが企てた『濡らし系』、そして詩郎さんがキッチリ呼応した『オトナのアーバン・ソウル』『夜の静寂 (しじま) の囁き』みたいなのが、見えてきましたね、読めてきましたね〜」


クルマの中で聴くという、オトナの快楽

[2005年6月某日 於 avex 5階 会議室]

KC : 「今回の表1 (ジャケット) は、詩郎さんが昔から使ってるこのロゴが、ブリンブリンにHip-Hop的で、イイですね〜」

Shiro : 「ありがとうございます。元々このロゴは僕がパリでクラブをやってたとき、クラブ名が"SHIRO"だったので『S』という文字とト音記号を引っかけて
フランス人のデザイナーが作ったモノです。(フィリップ)スタルクのお弟子さんなんですけど。で、今回は『夕闇』とか『夜の囁き』ってテーマがあったので、イメージカラーを『Violette』に定めて『夜に輝く宝石』というイメージでロゴをデフォルメしました。だから、どっちかっつーとヨーロピアン・エレガントなんだけど、それがHip-Hop的に映るというのも時代ですかねえ」

KC : 「Violette=紫ですか、うん、メロウな色です。あと何といってもマスタリング・エンジニアがウエストサイドのビッグHip-Hopアーティストのほとんどを手掛けてるBrian GARDNERってのもありますね。彼の起用は2回目ですか?」

Shiro : 「はい、最近ミュージシャンが西へ西へと動いてます。ニューヨークなんか縮小傾向です。何件か有名スタジオも閉まっちゃいましたし。当然エンジニアたちもロサンゼルスに移動してます。Hi-Fiも音楽の内容と同じく時代のトレンドっていうのがありますしね。もちろん再び東が輝くのも間違いないんだけど、優れたアーティストや芸能人って難破船を予期して逃げ出すネズミじゃないけど、そういう感覚だけは鋭いから、それを頼りに動くしかない」

KC : 「これまたブログで拝見したのですが、そんなPrinceもJanetもDREもSnoopもEMINEMも50 Centも手掛ける巨匠Brian GARDNERが『Shiroの音楽は、まずEW&Fのようにゴージャス、なのにHip-Hop的だし、Gospelの盛上がりもある』って評したんですってね」

Shiro : 「自分で言うのもなんですが、その通りなので、うれしかった」

KC : 「いや、これほど詩郎さんの音楽を明確、的確に言い当てた表現はないですよ。ホント、流石です」

Shiro : 「で、Brianが『まずクルマで聴きたいね、ラスヴェガスまでのドライヴに最高だね』って言ったんですよ」

KC : 「クルマで聴く音楽って、それがまずオトナですよね、当然免許が必要ですから (笑) 。これって語り落とされがちなんですけど、自宅から初めてリスニング空間を外に持ち出したのはウォークマンだなんて言う人がよくいますけど、じつはとっくの昔から『クルマで聴く』っていう快楽があったんですよね」

移動の連続により広がる、オトナの音楽

KC : 「クルマも移動の道具ですが、まず詩郎さんご自身がものすごい移動量じゃないですか。だいたいお住まいがロンドン、パリ、東京の3箇所、しかも絶えず欧州のどこそこを回って仕事していらっしゃるし、もちろんアメリカもアジアも、まさに移動の連続じゃないですか。やっぱり、それが詩郎さんの音楽に与えるものは大きいんじゃないかな、と・・・」

Shiro : 「もちろんです。まず、きょうびR&BやHip-Hopって世界的なトレンドですし、いちばん矢面に立つ音楽。あらゆる流行に敏感で、いつも目まぐるしく変化している。だから世界中を『絶えず』移動して見えてくるモノっていうのは本当に大きいですよ。いくらネット時代とはいえ、世界各地のスタジオで得られる『作り手がわの最新情報』だけは僕らミュージシャンしか手に入りませんし」

KC : 「たとえばロンドン、パリ、東京だと何か具体的な例ってありますか? 音楽以外のことでも」

Shiro : 「東京には何でもある、進んでるとか世界一物価が高いとか、すべて過去のことになっちゃいましたよね。だいいち今って乱立する高層ビル群をみて『都会だな〜』なんて実感する時代じゃないですよね。『アーバン』だって、今はアーバン=摩天楼じゃない。たしかにそういう時代もあったけど、今アーバンってもっと観念的ですよね。今のアーバンって『内面がいかに成熟してるか』ってコトだと思いますよ。そう、やっぱオトナってことじゃないですか」

KC : 「ひと昔まえまでのアーバン=摩天楼というのは、そこに住んでいる人達のように『リッチになること』、お金持ちイコール都会的というイメージでしたよね。でも今、それこそ9.11以降っていうのは、もっと内面を磨くこと、つまり『心の洗練』が大切で、それが『あらゆる意味での洗練』につながり、ひいては一番都会的だっていう捉え方ですよね」

Shiro : 「街そのものの内面というのもありますよね。パーツで言えば、そこにあるバーのセンスとか、そこにいる女性の胸に輝く宝石のほうに、よりアーバンを感じる時代でしょう。ジャケットのロゴじゃないけど『オトナにとっての宝石とは何か? 』ってコトですよね。ま、それは音楽であって欲しい、とも言えますが」

エレガントな、オトナの『AOS=アダルト・オリエンテッド・ソウル』!?

KC : 「日本で詩郎さんみたいな音楽をやってる人が誰もいないのは当然ですが、これは誇張でもなんでもなく、僕は世界でもQuincyか詩郎さんぐらいだと思う」

Shiro : 「ま、売れ方はケタ違いですが(笑) ・・・」

KC : 「確かにプロデューサーとしてMichael(JACKSON)を手がけて以降のQuincyは超凄腕仕掛け人としての印象が強いですが・・・ジャズ・トランペッター、アレンジャーとしての彼は突出した高い音楽性でこそ強く語られる人でしたよね。ジャズという要素でもQuincyと詩郎さんは重なりますが、そうですね、たしかに『ヨーロッパ的』というのも、二人が重なる大きな要因かもしれません」

Shiro : 「最近アメリカのHip-Hop連中って『ヨーロピアン・エレガンス』志向が強いじゃないですか。奴等ってデコラティヴな格好も変によく似合うもんだから、ヨーロッピアン・ファッション・ピープルにとっても、よけいHip-Hopの『最先端』感が強調される。ま、PharrellやAndre3000が仏VOGUEやFIGAROに登場する時代ですから・・・さっきの話じゃないけどパリに居ると、それがいかに画期的で時代を象徴してるかっていうのを痛感する」

KC : 「今アルバムでLorenが唄う"Runaway"も"See With The Sun"も、きょうびのサウンドなんだけど随所にジャジーなピアノが入っていて、まさしく『詩郎さん流儀のエレガンス』に溢れています。とくに"Runaway"は、詩郎さんに初めてデモを聴かせていただいた場所がパリのスノッブなホテルSaint-James(サン・ジャムス)だったので印象も格別です。そういえば、すでにあの時こんな感じのガイド・ピアノが入ってましたね」

佐藤研 : 「A&Rとして今回の押し曲は、なんと言っても"Love Changes" ! ソウル好きにとって『ここで、こういう楽器が、こういう風に鳴ってほしい』という欲求がすべて満たされてるっつーんですか・・・ま、『濡らし系』を推進する僕にとって、もう、完璧な仕上がりです」

KC : 「濡らし系、大人、アーバン、夜の囁き、紫、エレガント・・・、さあ、キーワードはたくさん出てきましたが、内容をひとことで言い切れるキャッチ・フレーズは? これまでのSONGBOOKにはありましたよね」

Shiro : 「前作は『Nu Synfonyq Soul』、『Da Real Music』なんてのもありました」

佐藤研 : 「なんの、なんの、あるんですよ松尾さん! 若かりし頃ロックにハマった層が30代以上になった70年代後期に、そういう大人のリスナーをターゲットに登場したAOR=アダルト・オリエンテッド・ロックっていうのが登場しましたけど、その伝で言えば<SHIRO'S SONGBOOK ver.7.0>は若かりし頃ニュージャックあたりにハマった層が成長して聴く『AOS=アダルト・オリエンテッド・ソウル』! どうです? 」

KC : 「わかりやすいですよね、AOS・・・記号的な呼称としても。ありそうで無かった」

アルバムの最終曲が、『オトナの夜』のはじまり !?

Shiro : 「松尾さん、参加シンガー、ミュージシャンなどのディテールについては、なんか気がついたことってありましたか? 」

KC : 「詩郎さんのアルバムでは毎度おなじみIan(PITTER)の『語り』ですが、これもQuincyのcThe Secret GardencにおけるBarry WHITEじゃないですが、もう定番中の定番。しかも(佐藤)研さん唱えるところのAOSサウンドという観点からも、これ以上ないハマりかたですよね」

Shiro : 「今回、アルバムの幕開け、幕間、終幕と全体的に『語り』を効かせてるのは、大人とかアーバンっていうキーワード群から、そのようにしたところもありますが、じつは新たにJerry(BROWN)というIanに匹敵するほど強力で魅力的な『語り手』が登場したのも大きいです。もちろん、これまでもJerryはSONGBOOKの常連でしたし、ベーシスト、ドラマー、ヴォーカリスト、
いずれのパフォーマンスも素晴らしいってコトが、それだけでもまず驚異的だったのに・・・まさか『語り』もこれほどイケるとは、本当に嬉しい誤算でした。"Violette Sky"や"Night Flight"でのJerryにはトロけますよ、まさしくアダルト・オリエンテッド」

KC : 「そして縦横無尽のLorenやMichelle(DIXON)の絶唱ぶりにも、いつもながら恐れ入りますが、和田昌哉さんの唄う"Eyes Of A Child..."にも注目したいですね」

Shiro : 「今年デビューの和田ですが、彼との付き合いはもう7〜8年になります。昨年、僕の看板シンガーLoren、Michelle、Ianの三人が共にMISIAのツアーで来日したとき、その合間に僕とラジオ・ライヴも演ったのですが、誰がリードを唄ってもBV (Backing Vocals) が残り二人になってしまい手薄になるので、BVの三人目を和田に頼みました。だから和田はもう身内っていう感覚で
す」

佐藤研 : 「最後の曲について一言。何と9分ぐらいあるんですよ。でも気持ちイイのなんのって、コレが。いつまでも聴いていたいっていうか・・・」

Shiro : 「そう、Bobby CALDWELLの"What You Won't Do For Love"もそうだけど、アウトロ(曲の最後のくり返し部分)の向こうに深遠と広がる世界に身をまかせ、永遠に聴いていたい曲ってありますよね・・・」

KC (ニヤリ)「つまり『このまま夜が続いたらいいのに』ってこと?」

Shiro : 「ウマイっ ! 」

佐藤研 : 「山田くん、座布団 !! 」

KC : 「それこそ今回のテーマ『オトナの夜』そのものじゃないですか。いや〜、
これでまとまりましたね(笑) 」


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